ヘスの法則
ヘスの法則(総熱量保存の法則)とは、反応熱は反応の経路によらず、反応の最初と最後の状態だけで決まるという法則です。1840年にヘス(G. H. Hess)が実験から見出しました。
法則の内容
- (1) ヘスの法則とは、化学反応における反応熱の総量は、反応の経路や途中の段階によらず、始めの状態と終わりの状態だけで決まるという法則である。総熱量保存の法則ともいう。OpenStax「Enthalpy」
- (2) エンタルピーが状態量(経路によらず状態だけで決まる量)であることの表れである。だから熱化学反応式は連立方程式のように足し引きできる。OpenStax「Enthalpy」
使い方
直接測定しにくい反応熱を、測定できる反応熱の組合せから計算できます。
例:炭素から一酸化炭素への生成熱
炭素を不完全燃焼させて一酸化炭素だけを得るのは難しく、生成熱を直接測れません。そこで測定できる次の2つを使います。
- C(黒鉛) + O₂(気) = CO₂(気) + 394kJ
- CO(気) + 1/2 O₂(気) = CO₂(気) + 283kJ
式1 − 式2 より
C(黒鉛) + 1/2 O₂(気) = CO(気) + 111kJ
- (3) ヘスの法則により、熱化学反応式を足し引きして未知の反応熱を求められる。直接測定が困難な生成熱の算出に用いられる。OpenStax「Enthalpy」
- (4) ヘスの法則から「反応熱=生成物の生成熱の総和 − 反応物の生成熱の総和」という公式が導かれる。OpenStax「Enthalpy」
測定との関係
- (5) 反応熱は、実際には熱量計(カロリメーター)を用い、熱量=比熱 × 質量 × 温度変化 の関係から測定する。ヘスの法則は、測定できない反応熱を測定値から導くための道具である。OpenStax「Calorimetry」
危険物との関係
- (6) 危険物の燃焼熱は、生成熱の表とヘスの法則から計算できる。燃焼熱が大きい物質ほど、同じ量が燃えたときの発熱量が大きい。総務省消防庁「危険物とは」
- (7) 燃焼が一気に進んでも、ゆっくり酸化しても、始めと終わりの状態が同じなら発生する熱量の総和は同じである。違うのは発熱の速さであり、これが火災になるかどうかを分ける。総務省消防庁「危険物とは」
試験での頻出ポイント
- 「反応熱は反応経路によらない」が法則の核心です。「経路によって変わる」とする選択肢は誤りです。
- 熱化学反応式は、通常の方程式と同じように足し引きできます。
- 「反応熱=生成物の生成熱の和 − 反応物の生成熱の和」はヘスの法則の帰結です。
- 発熱量の総和が同じでも、発熱速度が違えば危険性は大きく異なります。
出典・参考
- OpenStax Enthalpy
- OpenStax Calorimetry
- 総務省消防庁 危険物とは