化学平衡
可逆反応で、正反応の速さと逆反応の速さが等しくなり、見かけ上、反応が止まったように見える状態を化学平衡(平衡状態)といいます。
平衡状態とは
- (1) 化学平衡とは、可逆反応において正反応の速さと逆反応の速さが等しくなり、各物質の濃度が時間とともに変化しなくなった状態をいう。OpenStax「Chemical Equilibria」
- (2) 平衡状態でも正反応と逆反応はどちらも進行し続けている。反応が完全に停止しているわけではないため、動的平衡と呼ばれる。OpenStax「Chemical Equilibria」
- (3) 平衡状態では各物質の濃度が一定になるが、反応物と生成物の量が等しいという意味ではない。OpenStax「Chemical Equilibria」
平衡定数
可逆反応 aA + bB ⇄ cC + dD について、平衡状態での濃度を用いて
K = [C]ᶜ[D]ᵈ / [A]ᵃ[B]ᵇ
で表される K を平衡定数といいます。
- (4) 平衡定数 K は、生成物の濃度の積を反応物の濃度の積で割り、それぞれ係数を指数として付けた値である。温度が一定なら K は一定で、濃度や圧力を変えても変わらない。OpenStax「Equilibrium Constants」
- (5) 平衡定数は温度によって変わる。触媒を加えても K は変わらない。OpenStax「Equilibrium Constants」
- (6) K が大きいほど平衡は生成物側に偏っており、K が小さいほど反応物側に偏っている。OpenStax「Equilibrium Calculations」
触媒の働き
- (7) 触媒は活性化エネルギーを下げて反応速度を大きくするが、正反応と逆反応をともに同じ割合で速くするため、平衡の位置(平衡定数)は変えない。平衡に達するまでの時間を短くするだけである。OpenStax「Chemical Equilibria」
平衡の移動
- (8) 平衡状態にある系の条件(濃度・圧力・温度)を変えると、その変化をやわらげる向きに平衡が移動して新しい平衡状態になる。これをルシャトリエの原理という。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
危険物との関係
- (9) 危険物の燃焼は事実上不可逆だが、危険物の製造工程では可逆反応を扱うことが多い。平衡をどちらへ寄せるかで温度・圧力を制御するため、加圧設備には圧力計と安全装置が要求される。e-Gov「危険物の規制に関する政令 第9条第1項第16号」
- (10) 密閉容器内で液体と蒸気が共存する状態も、蒸発と凝縮の速さが等しい平衡である。このときの蒸気の圧力が飽和蒸気圧で、温度が上がるほど大きくなる。OpenStax「Phase Transitions」
試験での頻出ポイント
- 平衡は動的平衡。「反応が完全に止まった状態」とする選択肢は誤りです。
- 平衡状態でも「反応物と生成物の量が等しい」わけではありません。
- 触媒は平衡を移動させません。反応速度(平衡に達する時間)だけを変えます。
- 平衡定数は温度で変わり、濃度・圧力・触媒では変わりません。
- 密閉容器内の飽和蒸気圧も気液平衡の例です。
出典・参考
- OpenStax Chemical Equilibria
- OpenStax Equilibrium Constants