電気化学
電気化学では、電子を失う酸化と電子を受け取る還元が同時に進みます。危険物取扱者試験では、電池と電気分解の極性の違い、電子の流れ、金属のイオン化傾向、起電力を一続きで整理することが重要です。イオン化傾向を応用した腐食・防食は金属の腐食で扱います。
酸化還元と電極
- (1) 酸化は電子を失う変化である。金属Mが陽イオンになる半反応は、M → Mⁿ⁺+ne⁻ と表せる。(IUPAC Gold Book「oxidation」)
- (2) 還元は電子を受け取る変化である。金属イオンが析出する半反応は、Mⁿ⁺+ne⁻ → M と表せる。(IUPAC Gold Book「reduction」)
- (3) アノードは酸化が起こる電極、カソードは還元が起こる電極である。この対応は電池でも電気分解でも変わらない。(IUPAC Gold Book「anode」・同「cathode」)
電池と電気分解
- (4) 電池(ガルバニ電池)は自発的な酸化還元反応で化学エネルギーを電気エネルギーへ変える。アノードは負極、カソードは正極になる。(IUPAC Gold Book「galvanic cell」・北海道大学「電池と電気化学」PDF・14.3)
- (5) 電池の外部回路では、電子は酸化が起こる負極(アノード)から、還元が起こる正極(カソード)へ流れる。(北海道大学LASBOS「ダニエル電池」)
- (6) 電気分解では外部電源で非自発的な反応を進める。電源の正極につながるアノードが正極、負極につながるカソードが負極になる。(IUPAC Gold Book「electrolytic cell」・北海道大学「電池と電気化学」PDF・水の電気分解)
- (7) 電気分解でもアノードで酸化、カソードで還元が起こる。「陽極・陰極」という極性だけを電池へそのまま当てはめない。(IUPAC Gold Book「anode」・同「cathode」)
イオン化傾向と起電力
- (8) 金属のイオン化傾向が大きいほど電子を失って陽イオンになりやすく、酸化されやすい。一般的な水溶液中の並びでは、AlはFe、Ni、Pb、Cu、Agよりイオン化傾向が大きく、Agはこれらの中で小さい。(京都大学「電気化学の基礎」PDF・表1 標準電極電位)
- (9) 標準電極電位の差が大きい二つの電極を組み合わせるほど、標準起電力は大きくなる。AlとFe・Ag・Cu・Pb・Niを組み合わせる公開問題では、最も電位差が大きいAgとの組合せが最大となる。(消防試験研究センター「甲種公開問題」PDF・問22・京都大学「電気化学の基礎」PDF・表1)
- (10) 標準還元電位が与えられたとき、標準起電力は E°cell=E°cathode−E°anode で求める。例えばCu²⁺/Cuが+0.34V、Zn²⁺/Znが−0.76Vなら、Cuをカソード、Znをアノードとして1.10Vである。(北海道大学LASBOS「ダニエル電池」・北海道大学「電池と電気化学」PDF・14.3)
ひっかけ
- 酸化・還元が起こる電極名と、正極・負極を混同しない。
- 電子は外部回路を負極から正極へ流れる。電解質中を移動する主役はイオンである。
- 起電力は標準還元電位の「カソード-アノード」。符号を無視して単純に加えない。
出典・参考
- 一般財団法人消防試験研究センター 甲種危険物取扱者試験・公開問題(Alと各金属の組合せによる起電力の出題例)
- IUPAC Gold Book Electrochemical cell(ガルバニ電池・電解セルを含む電気化学セルの定義)
- IUPAC Gold Book Nernst equation(電極電位と標準電極電位の関係)