燃焼範囲
燃焼範囲(爆発範囲)とは、可燃性蒸気やガスが空気と混合したとき、点火すると燃焼(爆発)が起こる濃度の範囲です。空気中の可燃性蒸気の体積%(vol%)で表し、下限値を燃焼下限界(下限値)、上限値を燃焼上限界(上限値)といいます。
定義
- (1) 燃焼範囲とは、可燃性蒸気と空気の混合気が点火により燃焼する濃度の範囲をいい、空気中の蒸気の体積百分率(vol%)で表す。下限値より薄くても、上限値より濃くても燃焼しない。総務省消防庁「危険物とは」
- (2) 下限値より薄い(可燃物が少なすぎる)場合は、燃焼に必要な可燃物が足りず燃焼しない。職場のあんぜんサイト「アセトアルデヒド SDS」
- (3) 上限値より濃い(可燃物が多すぎる)場合は、燃焼に必要な酸素が足りず燃焼しない。ただしこの状態の混合気が空気で薄められれば燃焼範囲に入るため、安全ではない。職場のあんぜんサイト「アセトアルデヒド SDS」
- (4) 危険性の指標としては、下限値が低いほど、また範囲が広いほど危険である。総務省消防庁「危険物とは」
主な危険物の燃焼範囲
| 物質 | 下限値〜上限値(vol%) | 範囲の幅 |
|---|---|---|
| ガソリン | 1.4〜7.6 | 6.2 |
| 灯油 | 1.1〜6.0 | 4.9 |
| 軽油 | 1.0〜6.0 | 5.0 |
| ベンゼン | 1.2〜8.0 | 6.8 |
| トルエン | 1.1〜7.1 | 6.0 |
| アセトン | 2.15〜13 | 10.85 |
| エタノール | 3.3〜19 | 15.7 |
| メタノール | 6.0〜36 | 30 |
| ジエチルエーテル | 1.9〜36 | 34.1 |
| 二硫化炭素 | 1.3〜50 | 48.7 |
| アセトアルデヒド | 4.1〜55 | 50.9 |
- (5) ガソリンの燃焼範囲はおおむね1.4〜7.6vol%である。下限値が低く、常温で容易に燃焼範囲に達する。総務省消防庁「危険物とは」
- (6) アセトアルデヒドの燃焼範囲は4.1〜55vol%で、上限値が極めて高く範囲が広い。職場のあんぜんサイト「アセトアルデヒド SDS」
- (7) ジエチルエーテルの燃焼範囲は1.9〜36vol%で、下限値が低く範囲も広い。職場のあんぜんサイト「ジエチルエーテル SDS」
引火点との関係
- (8) 引火点とは、その液温での蒸気濃度が燃焼範囲の下限値に達する最低の液温である。したがって、下限値が低い物質ほど引火点も低くなる傾向がある。総務省消防庁「危険物とは」
燃焼範囲を変える要因
- (9) 温度が上がると燃焼範囲は広がる(主に上限値が上昇する)。NIST Chemistry WebBook
- (10) 空気の代わりに酸素中では燃焼範囲が大幅に広がる。酸素濃度が高いほど危険性が増す。総務省消防庁「危険物とは」
- (11) 窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを加えると酸素濃度が下がり、燃焼範囲は狭まる。ある濃度以上を加えると燃焼範囲がなくなる(窒息消火の原理)。総務省消防庁「危険物とは」
計算問題での使い方
蒸気の体積濃度は「蒸気の体積 ÷ 混合気全体の体積 × 100」で求めます。たとえば容積10m³の室内にガソリン蒸気が0.2m³存在するとき、濃度は0.2 ÷ 10 × 100=2.0vol%です。ガソリンの燃焼範囲は1.4〜7.6vol%なので、燃焼範囲内にあり極めて危険です。
- (12) 蒸気濃度(vol%)=蒸気の体積 ÷ 混合気の全体積 × 100 で計算し、燃焼範囲の下限値と上限値のあいだにあるかどうかを判定する。総務省消防庁「危険物とは」
試験での頻出ポイント
- 「下限値より濃度が低ければ安全」ではなく「燃焼しない」だけです。換気や漏えいの状況次第で燃焼範囲に入ります。
- 上限値より濃くても燃焼しませんが、空気で薄まれば燃焼範囲に入るため危険です。ここが定番のひっかけです。
- 危険性の指標は「下限値が低い」「範囲が広い」の2つ。片方だけで判断させる選択肢に注意します。
- 温度上昇・酸素濃度上昇で燃焼範囲は広がり、不活性ガスの添加で狭まります。
- 下限値が低いほど引火点も低くなる傾向があります。
出典・参考
- 総務省消防庁 危険物とは
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト GHSモデルSDS
- NIST Chemistry WebBook