有機化合物の分離
混合物から目的の物質を取り出す操作を分離・精製といいます。有機化合物では、溶解性の違いと沸点の違い、そして酸・塩基の性質の違いを利用します。
基本的な分離操作
| 操作 | 原理 | 例 |
|---|---|---|
| ろ過 | 固体と液体を分ける | 沈殿の分離 |
| 蒸留 | 沸点の違いを利用して液体を分ける | 海水から水を得る |
| 分留(分別蒸留) | 沸点の差が小さい液体どうしを段階的に分ける | 原油からガソリン・灯油・軽油を得る |
| 抽出 | 溶媒への溶けやすさの違いを利用する | 水溶液からジエチルエーテルで有機物を取り出す |
| 再結晶 | 温度による溶解度の違いを利用する | 不純物を含む固体の精製 |
| 昇華法 | 昇華する物質だけを気体にして分ける | ヨウ素・ナフタレンの精製 |
| クロマトグラフィー | 吸着力の違いを利用する | 色素の分離 |
- (1) 蒸留は沸点の違いを利用して液体を分離する操作で、沸点の差が小さい成分を段階的に分けるものを分留(分別蒸留)という。OpenStax「Hydrocarbons」
- (2) 原油の分留では、沸点の低いものから順に石油ガス、ガソリン(ナフサ)、灯油、軽油、重油・残油が得られる。第4類危険物の品名がおおむね沸点順に並ぶのはこのためである。OpenStax「Hydrocarbons」
- (3) 抽出は、混じり合わない2つの溶媒への溶けやすさの違いを利用して目的物を移し取る操作である。分液漏斗を用い、水層と有機層に分ける。OpenStax「Other Units for Solution Concentrations」
- (4) 再結晶は、温度による溶解度の差を利用して固体を精製する操作である。高温で溶かし、冷却して目的物だけを結晶として析出させる。OpenStax「Other Units for Solution Concentrations」
- (5) 昇華法は、ヨウ素・ナフタレン・しょうのうのように昇華する物質を含む混合物から、その物質だけを気体にして取り出す操作である。OpenStax「Phase Transitions」
酸・塩基の性質を使った分離
有機化合物を、酸性・塩基性・中性の違いで分けることができます。塩になると水に溶けるようになり、有機層から水層へ移ります。
| 化合物 | 性質 | 反応する試薬 | 生じる塩 |
|---|---|---|---|
| カルボン酸(安息香酸など) | 強めの酸性 | 炭酸水素ナトリウム水溶液(弱い塩基)でも塩になる | 水層へ移る |
| フェノール類 | 弱い酸性 | 水酸化ナトリウム水溶液(強い塩基)で塩になる | 水層へ移る |
| アミン類(アニリンなど) | 塩基性 | 塩酸で塩になる | 水層へ移る |
| 中性物質(ベンゼン、ニトロベンゼンなど) | 中性 | いずれとも反応しない | 有機層に残る |
- (6) 有機化合物の分離では、カルボン酸は炭酸水素ナトリウム水溶液でも塩となって水層へ移り、フェノール類は水酸化ナトリウム水溶液で塩となって水層へ移り、アミン類は塩酸で塩となって水層へ移る。いずれとも反応しない中性物質は有機層に残る。OpenStax「Brønsted-Lowry Acids and Bases」
- (7) カルボン酸とフェノール類はいずれも酸性だが、カルボン酸のほうが強い。この差を利用し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使えばカルボン酸だけを分離できる。OpenStax「Aldehydes, Ketones, Carboxylic Acids, and Esters」
危険物との関係
- (8) 危険物の製造における蒸留工程では、設備の内部圧力の変動等により液体・蒸気・ガスが漏れないようにしなければならない。分離操作そのものが危険物の取扱いにあたる。e-Gov「危険物の規制に関する政令 第27条第2項第1号」
- (9) 抽出工程では、抽出罐の内圧が異常に上昇しないようにしなければならない。e-Gov「危険物の規制に関する政令 第27条第2項第2号」
- (10) 抽出に用いるジエチルエーテル(特殊引火物)やヘキサン(第1石油類)は、それ自体が第4類危険物である。分離操作の安全は、溶媒の危険性の管理でもある。職場のあんぜんサイト「ジエチルエーテル SDS」
試験での頻出ポイント
- 操作名と原理の対応(蒸留=沸点、抽出=溶解性、再結晶=溶解度の温度変化、昇華法=昇華性)が問われます。
- 原油の分留の順序(沸点の低い順にガソリン→灯油→軽油→重油)は、第4類の品名の並びと対応します。
- 酸・塩基による分離では「カルボン酸は炭酸水素ナトリウムでも塩になる」がフェノール類との決め手です。
- 中性物質は有機層に残ります。
- 蒸留・抽出は危険物の製造の技術上の基準の対象工程です。
出典・参考
- OpenStax Hydrocarbons
- OpenStax Aldehydes, Ketones, Carboxylic Acids, and Esters
- e-Gov法令検索 危険物の規制に関する政令 第27条